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七福@福山市 移転前最後のラーメン

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 福山駅前の一角に昭和レトロの情緒を残す一角「線維ビル」があります。ここにはかつて「虎龍」「七福」「一丁」と三軒のラーメン店が軒を並べるようにありました。かつて賑わったこの場所も今は七福一軒が細々と営業を続けるのみになっています。福山駅前再開発・・・全てはここから始まったようです。
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 ここは普段非常に愛想の良いおばちゃんと見方によっては無愛想ととられかねない寡黙なおじちゃんが二人でやっているようですが、この時間帯はおばちゃんが一人で切り盛りしていました。とりあえずカウンターに着くとラーメン(480円)の注文です。慣れた手つきで非常に短めの麺茹でとあとはスープを合わせて瞬く間の出来上がりです。ラーメン中細平打ち麺に濃いめの醤油スープネギ、メンマ、チャーシューと薄目ながらしっかり数の入ったチャーシューという尾道系の仕上がりになっています。スープと一杯含むと、嫌みのないすっきりしたベースの中に骨格がしっかり感じられる煮干しの風味、全体としてかつて隣接した一丁に比べると猛々しさは劣る物ものの魚介系が主体の上品さを感じる仕上がりとなっています。麺は非常に扁平率の高い平打ち麺で厚みが大変薄いので短い茹で時間でもジャストフィットです。チャーシューは薄いモモチャーシューですがモモにありがちなパサパサ感は無く何か独特の香りを持っています。このスープを引き立てるのにネギがいい仕事をしているようです。なるほど古くから福山市民に愛されてきただけの事はある素朴な中に味わいのあるラーメンです。
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 さて話は戻って再開発ですが、帰り際におばちゃんが経緯を教えてくれました。立ち退き話は半ば詐欺的な手法で強引に進められたようです。店子達が立ち退きを迫られたのは突然の事で、当初今年二月末までに明け渡すよう通告されたようです。慌てて移転先を捜して何とか二月末までに移転を決めた店もあるようですが当然そう簡単に移転先が決まるケースばかりでは無かったようで七福でもやはりなかなか移転先が見つからず実質二月末で店を閉めなければならない様な状況にまで追い込まれたようです。奥さんが役所に行ってこの件について相談したところ業者に対して行政指導が入ったようで、その後業者の態度が一転して次の店舗が見つかるまで今の店舗での営業を続けられることになったそうです。しかし、むしろ可哀想なのはあまり良い条件でないにもかかわらず立ち退きを迫られて不本意ながら移転した店舗だそうで「うちなんかまだ良いのよ」という同業を哀れむおばちゃんの言葉は寂しそうでした。
 考えてみれば日本人というのは変な民族です。横浜のラー博や明石のラーメン波止場、異業種では浪花餃子スタジアムや閉館した横浜カレーミュージアムなど現代の町にわざわざ費用を投じて昭和レトロの雰囲気を作るかと思えば、現実に残るノスタルジー溢れる風景を力ずくで潰そうとしてみたりする。オリジナルのままのノスタルジックを活かしてみるという発想があっても良いのではないでしょうか。

by emozione | 2008-03-16 15:50 | 広島県